アニマルトラッキングとは

フィールドサインを探し動物の行動を探る、それがアニマルトラッキング
雪が止んだ晴天の朝は、夜に動いた動物たちの足跡がたくさん見つかります。探勝路を歩けば、糞、食痕、爪痕、こすり跡などたくさんの動物の痕跡を見ることができます。
裏磐梯で見られる動物たちの足跡をたどり、どんな動物が歩いたのか何をしたのか、探っていくのもおもしろいものです。

足跡の主の見当をつけて、動物たちの行動をのぞいてみる・・・
それらの証拠(フィールドサイン)をたよりに落とし主を追跡してみましょう。さあ、名探偵の誕生です。

1【どんな動物・・・?】

①規則的で単純な足跡

ほとんど一直線で歩いているなら、前足でできた足跡の上に後ろ足をほぼ正確に乗せているので単純な足跡となる
(例)イヌ科、ネコ科、キツネ、イノシシ等

②不規則で複雑な足跡

足跡が2列で、大小の足跡が対であったり、一定の間隔を置いて足跡が1対並んでいるが、全体として見ると不規則に歩いた足跡である。
(例)イタチ科、クマ科、サルなど

③大小の足跡が対になっている足跡

足跡が2つの大きな足跡と2つの小さな足跡が対になっている。この動物は両前足を地につき、両後足は前足をまたぐようにして歩いている。
(例)ウサギ類、リス科、ネズミ科など

2【足跡の種類と特徴】

①蹄型

イノシシ

後足痕長:約5~8cm(成獣)

イノシシは湿地で転げまわり、全身を泥まみれにする習性がある。これを「ヌタを打つ」と言い、それをする場所が「ヌタ場」である。泥浴びした後イノシシは近くのマツの木の根元に行って、幹を牙で削り(牙かけ)、身体をこすって松やにをつけ体毛を磨く。

カモシカ

後足痕長:約5~5.5cm

カモシカは、シカの仲間ではなく牛の仲間です。
シカのように、あちこちにパラパラとまかれたような糞はカモシカには見られない。こんもりと1か所にためられた丸い糞であればカモシカが疑われる

②指型

イヌ

後足痕長:犬種によってまちまち

イヌはセントバーナード等の大型犬やチワワ等の小型犬など様々な犬種があるため、大きさはまちまちであるが、前半身が大きく筋肉も豊かで後半身は細いため足跡も前足は大きく、後足は小さい

キツネ

後足痕長:約4~5cm

キツネはイヌに比べて胸幅が狭いため、左右の足をほぼ一直線上に置く。さらに前足跡に後足を重ねるため、足跡は直線上に並んだ点となる。同じ地点に足を置くが、移動する速度によって足跡のパターンが異なってくる

タヌキ

後足痕長:約3.5~4cm

タヌキの足痕は子キツネやネコに似たところがある。タヌキは第3指(人間でいう中指で、イヌ科のものは第1指が地につかないため、足痕の内側から2つ目の指跡が第3指のものである)が最も長い。タヌキの足跡はキツネに類似しているが、歩幅が狐よりも狭く、キツネは連続的に並ぶのに対して、左右に揺れた歩行跡となる。

アナグマ

後足痕長:約6.5cm

アナグマは穴を掘るため極めて長い爪をもっている。そのため足跡には必ず長い爪痕が残っている。体重もあるため、足跡は明瞭となる。

前足痕の上に後足痕が少しずれて乗るため、2個分の足痕が一つの足跡に見える

③楕円型

ツキノワグマ
前足


ツキノワグマ
後足

後足痕長:約16cm

クマの足跡は人間が裸足で歩いたものと似ている。大きいこと、胸幅があるため左右の足痕が離れている。前後足とも強大な爪を備えている。この爪を使って木に登ったりすることから、樹幹に爪痕が観察されることもある

サル

後足痕長:約17cm

サルの足痕はまさに人間の子どもが裸足で歩いたものと似ている。雪の上では後足の親指の跡が思う以上に離れて残っている。サルは歩く時には後足の指を広げ滑るのを防ぐ。こうすることで雪の上でも埋もれない。また、指先と足裏の前半分に重心をかけるのでその部分の足痕が強く残る

④棒型

ノウサギ

棒型は主にノウサギの足跡によく見られる。

前足痕に比べると、後足痕が極めて大きい。また、ジャンプして前進するため、後足痕が並んでいる。

ニホンリス

後足痕長:約5~6cm

ニホンリスは樹上に巣を構えるが地上でもよく活動する。また、冬でも冬眠しないため雪の上でしばしば観察できる。

3、【落とし物(糞)】

アニマルトレッキングの足跡の主を特定するもう一つの方法は、糞である。糞には、動物の大きさと食べ物が反映される。つまり大きな糞は大型獣であり、小さいものは小型の動物であること。また、糞を分解すればどんなものを食べているかの見当もつけることができる。

①大きさ
大きなものはクマ類で、その大きさは両手ですくうようにして持つほどである。小はネズミ類でゴマ粒大から米粒大である。一般に体の大きい動物は大きい糞だが、カモシカなどの糞は一粒マーブルチョコレートほどで身体の割に小さい。しかもカモシカは排泄時に溜糞状に積み上げる。

②色
色は接触した食物によって同じ個体でも異なる。一般的に排泄直後のものでは、植物食のものは暗褐色、動物食のものでは黒色で光沢がある。日数の経過とともに表面が乾燥したり雨によって流され色が失われる。植物食のものは黄褐色っぽくなり、肉食のものは灰色っぽくなる

③形
一般に植物食のものは丸い粒状のものが多い。肉食のものは細長く先端部は次第に細くなって終わる。イノシシは粒状のものが1本に連なって細長い形状となっているが時間の経過とともにぽろぽろと粒状に分離する。また、雑食性のサルハイヌの糞に似て太く長い。

4、【食痕】

①草食動物の食痕
比較的、草食動物の棲息数が多いことから森の中ではこれらの食痕を目にすることが多い。
足跡のまわりに小さな木屑がたくさん落ちており、突き出している小枝をよく見ると、小枝の先や冬芽がかじられているのを見つけることができる。小さな草食動物は量的にたくさん食べることもあり、あちこちの小枝の先が切り取られたようになっているのですぐにわかる。

②肉食動物の食痕
肉食動物は棲息数が少ないことと、藪などに運び込んできれいに食べつくすことから、まれにしか発見することができない。鳥やリス、ネズミ等の羽毛や残骸、血痕で確認する。

5、【大好きなクルミや松ぼっくり】

クルミは動物たち、とくにリスやアカネズミなどにとって重要な食物である。
リスは枝伝いにやってきて木の上で実ったクルミの実を食べる。下顎の門歯で起用に半分に割り半分ずつ中身を食べる。食べ終えた殻はポイと捨てるので木の根元にたくさんのからが落ちているのを見ることができる。
また、リスは松ぼっくりの鱗片と鱗片の間にある小さな種を食べるために、鱗片のすべてを食いちぎり、エビフライのような芯を作ることが得意。

このようにたくさんの痕跡からどんな動物が行き来したのかを推測すると、とても楽しいアトラクションとなります。
豊かな裏磐梯の森でこそ楽しむことができる遊びです。

【参考文献】
「アニマルトラック&ハードトラックハンドブック」(今泉忠明・著/自由国民社)